動悸・不整脈の診断について・・・。~アップルウォッチ外来も含めて~

初めに

循環器専門外来をしていると胸が「ドキドキ」する症状で外来受診されるかたが多く受診されます。それが不整脈かどうかまずは聴診をします。ですが、最終的には不整脈の診断には不整脈が出ているときに心電図を記録する必要があります。不整脈がずっと続く「持続性」の場合はいつ心電図を記録しても不整脈の確認できます。しかし不整脈が数秒~数分しか続かない「発作性」の場合は診断に難渋します。動悸があり医療機関を受診しても、その時には不整脈が止まっていることがあるからです。

今回は動悸・不整脈診断検査方法のそれぞれの特徴と、最近メディアでも紹介される「アップルウォッチ(スマートウォッチ)外来」について解説します。

不整脈の診断方法

不整脈の診断には以下の検査があります。

12誘導心電図

一般的な検診などで測定する心電図です。医療機関で胸と手足に電極を貼り心臓を12の方向から電気の流れを確認します。最も詳しく心臓の電気の流れ、不整脈の種類を確認できますが医療機関受診でしか測定できず、発作性の不整脈の場合にはなかなか不整脈の診断には至りません。

24時間Holter心電図

24時間心電図波形を測定しますが一般的なHolterでは2-3の方向からの心電図となりますが、不整脈の診断は問題なくできます。メリットしては入院不要で24時間の心電図を記録し医師に確認してもらうことができます。気になる重さではなく服の上からであれば見えません。装着中も仕事はいつも通りしていただいてかまいません。しかし、これも24時間機器を装着している間に不整脈がでない場合は空振りに終わることになります。

携帯型心電計(オムロン社製、チェックミー)

動悸時に自ら簡単な操作で心電図を測定してもらうものです。自分で操作して心電図を記録するため、自覚症状のない(もしくは睡眠中の)不整脈は検出困難となります。最近では8時間程度の心電図波形記録ができる機器もあります。アップルウォッチのような心房細動の指摘はしてくれません。

埋め込み型ループレコーダ

測定チップを皮下に埋め込み、2-3年間ほど不整脈を記録すること可能です。皮下に埋め込むときも入院の必要なく外来で局所麻酔にて10分ほどで行えます。傷口は8mmほどでそこから細長い4.5cmほどのチップを皮下に入れます。不要になれば局所麻酔でいつでも取り出し可能です。皮下に埋め込むという精神的な抵抗ありますが、この機器の最大のメリットは埋め込むことで長期の間、自覚症状のない不整脈も検出できる点です。数か月に一度しかでない発作性不整脈の検出目的の場合にはよい適応になります。

スマートウォッチ(アップルウォッチ)

色々なヘルスケア機能(脈拍、酸素飽和度、体温など)を測定する多くのスマートウォッチが発売されていますが、心電図波形の記録とある程度の評価もできるスマートウォッチはアップルウォッチだけです。(アップルウォッチもすべての機種が心電図記録できるわけではないので購入時は販売店に確認してください)


アップルウォッチの心電図は、「家庭用心電計プログラム」及び「家庭用心拍数モニタプログラム」が家庭医用医療機器として承認されています。正確性は格段に向上しつつあり、常に身に着けることができる医療機器として有効性が示されつつあります。

便利なアップルウォッチですが限界もあります。心電図を測定する場合はその都度操作が必要になるため、寝ている間や自覚症状のない不整脈の場合は心電図測定できません。また、アップルウォッチはほぼ毎日充電も必要です。

それでもアップルウォッチは普段装着している腕時計(スマートウォッチ)で好きな時に自分の心電図を記録でき、精度も上昇し心房細動が疑わしい場合は知らせてくれるというアップルウォッチの機能はこれまでにない大きなメリットと考えます。「アップルウォッチ外来」とは上記の特徴を踏また「アップルウォッチの心電図測定機能を用いた不整脈の診断をする外来」と思っていただいてかまいません。当院でもアップルウオッチの心電図波形を行っておりますのでご相談ください。

最後に

不整脈の診断のためには上記のようにいくつかの手段があり、それぞれ特徴があります。患者さまのお話を聞かせていただきそれぞれに合った検査をお勧めさせていただきます。

心電図測定機能のついているアップルウォッチを持っているかたは積極的に心電図測定してみてください。ご不明な点があれば当院でもアップルウォッチの波形持参いただければ判断させていただきます。プリントアウトしていただけるとありがたいのですが、アイフォンの画面だけでもかまいません。

めまいの原因が不整脈、心臓が原因である可能性もあります。動悸以外にも胸部症状やめまいあればいつでも当院にご相談ください。

(西澤健吾)