~胸が苦しい~(狭心症・心筋梗塞を中心に)

はじめに

「胸の症状」(胸が苦しい、動悸する、息切れするようになった 等々)を感じた時、皆様はどのように対応するでしょうか。循環器(心臓)専門外来を長く担当してきましたが、ほとんどのかたは結果として様子観察でかまいません。しかし、胸の病気には突然死につながることもあり軽く見てはいけません。
今回は命にかかわる「狭心症・心筋梗塞」をメインに説明します。
簡単に説明すると狭心症とは心臓を養っている血管(冠動脈)がつまりかけている状態。
心筋梗塞とはその血管(冠動脈)が(ほぼ)閉塞している状態です。この病気のリスク因子として「高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、高齢など」があげられ、これらの数が多いほど、重度であるほど狭心症・心筋梗塞の可能性が高くなります。
心筋梗塞は命に係わる可能性があり、狭心症の段階で発見し治療を開始しなければなりません。また心筋梗塞は致死性不整脈や心破裂によって突然死も起こり得るため、疑ったら翌朝まで待ってはいけません。早期の診断・治療によって死亡率の低下、心機能の温存を期待できます。
本文章を早期医療機関受診の参考にしていただければ幸いです。

胸が苦しい原因は?

直ちに命にかかわる病気としては心疾患(狭心症、心筋梗塞、不整脈など)、大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)、肺疾患(気胸、気管支喘息発作など)があげられます。
直ちに命にかかわらない病気として上部消化管疾患(逆流性食道炎、胃潰瘍など)、胆道疾患(胆のう炎など)、筋・骨格・皮膚疾患(肋骨骨折、肋間神経痛、帯状疱疹など)等々があげられます。細かく上げればきりがありませんが、上記疾患で治療が必要な病気はほぼ含まれます。他に意外と多いのは原因不明、精神的な影響というものもあります。

狭心症・心筋梗塞の症状について

今回は狭心症・心筋梗塞の症状に絞って説明します。
下記の症状の時はとくに注意が必要であり早期に医療機関の受診をお勧めします。

  • 状況;いつもの歩行や階段などの労作で毎回のように胸が苦しくなったり、息がすぐ切れるようになってきます。
  • 性状;前胸部を手のひら大でギューッとつかまれるような、圧迫されるような感じ。(自分で圧迫して痛みがズキッと増悪する場合は狭心症の可能性は低くなります。)
    冷汗、動悸、息切れなどを伴う場合もあります。
  • 持続時間;数分から数十分以上続く。(ズキッやパクパクっとした一瞬の症状は狭心症の可能性は低くなります。)
  • 範囲・部位;前胸部~肩・上腕あたりに、手のひらくらいの範囲で感じます。みぞおちや背部や肩甲骨あたりでも狭心症の可能性はあります。(針で刺されるようなとか、指で示せるごく狭い範囲の痛みであれば狭心症の可能性は低くなります。)

狭心症・心筋梗塞の検査、診断

  • 「12誘導心電図検査」;心臓に関して短時間に多くの情報をえることができ、急性心筋梗塞かどうかはほぼ確認できます。胸痛が続いている患者さまは受付にその旨を説明していただけば、心電図だけでも優先的に確認します。心電図で急性心筋梗塞が疑わしいときはクリニックで余計な検査はせず、直ちにカテーテル検査・治療できる病院へ紹介・搬送とさせていただきます。
  • 「心エコー検査」;心電図と並んで心臓の病気では基本的な検査です。心電図と心エコーでほぼ心臓の病気はあたりをつけることが可能です。冠動脈支配領域に一致して心臓の壁運動低下がないか、弁膜症ないか、心臓の周りに液体(血液)貯留ないか等をベッドサイドで痛みもなく、すぐに確認できます。
  • 「胸部レントゲン」;肺うっ血ないかどうか、胸水や肺疾患の合併ない確認します。
  • 「血液検査」;心筋梗塞になると心筋細胞から酵素が血中に流れ出るため、特有の項目が上昇します。

~ここまでが一般的なクリニックでできる検査となります~
急性心筋梗塞は重篤ですが心電図・心エコー・採血で明らかな異常となるため診断に迷うことは少なくなります。しかし、狭心症の場合は症状改善後すると心電図・心エコー・採血では全く異常を認めない場合があり、診断・方針決定に難渋することがあります。
そういった場合は狭心症を疑う場合は総合病院へ紹介し運動負荷検査(心電図、シンチ)、冠動脈CT検査、冠動脈カテーテル検査で確認していだくことになります。

最後に

胸部症状は奥が深く上記説明が一概に当てはまらない場合があります。面と向かって診察・検査してみないと診断はできません。胸部症状ある場合は必ず早期に医療機関を受診いただきますようお願いいたします。

※当院ではクリニックでできる上記検査は一通り当日直ちに受けていただくことができます。心エコーも診察室で行い、その場で説明いたします。
不整脈が疑わしい場合は24時間Holter心電図や携帯型心電計の貸し出しも行っております。
胸部症状について、御心配なことがあればいつでも当院に御相談ください。当院は予約不要です。
(発熱ある場合は感染対策のため当院に電話連絡してから御来院いただきますようお願いいたします。)

(西澤健吾)