初めに
健診で脂質異常症(LDLコレステロール;悪玉コレステロール)と言われたけど、症状ないから放置しているかたいませんか。「家族性高コレステロール血症」かもしれません。
家族性高コレステロール血症とは、LDLコレステロール(LDL-C;悪玉コレステロール)が血液中で高くなり、若いときから動脈硬化が進み血管が細くなったり詰まったりする病気です。
人口300人に一人の割合(ヘテロ接合体といいます)で認められ比較的高頻度の遺伝性疾患です。重症のケース(ホモ接合体といいます)では36-100万人に一人に認められます。特に心臓の血管(冠動脈)に影響が大きく、若くして心筋梗塞や狭心症を引き起こします。心筋梗塞は突然死も起こしうる命に係わる疾患です。
心筋梗塞の発症は、早い方では男性20歳代から、女性30歳代から始まります。冠動脈疾患は家族性高コレステロール血症でないかたと比べて10-20倍発症しやすくなるといわれています。
家族性高コレステロール血症の診断は?
日本動脈硬化学会によると15歳以上では下記①~③のうち二つ以上を満たしたときに診断されます。
① 高LDLコレステロール血症(未治療時でLDL-C180mg/dL以上)。
② 腱黄色腫(手背、肘、膝、アキレス腱肥厚)または皮膚結節黄色腫。
③ 家族性高コレステロール血症または早発性冠動脈疾患の家族歴(親、兄弟)。
(補足)
・甲状腺機能低下は高LDL-C血症となるので採血で除外が必要です。
・アキレス腱エコーで「男性;6.0mm以上、女性;5.5mm以上」がアキレス腱肥厚です。
・早発性冠動脈疾患とは「男性55歳未満、女性65歳未満」で発症した狭心症・心筋梗塞の患者さんをさします。
(15歳未満では診断基準が異なります)
家族性高コレステロール血症の治療は?
- LDL-C100mg/dL未満を目指します。心筋梗塞などの血管疾患をすでに発症したかたはLDL-C70mg/dL未満を目指します。
- 方法としてはまずは内服薬(スタチン、エゼチミブなど)があります。それでも改善なければ皮下注射があります。
最後に
本疾患は比較的多い遺伝性の疾患であり、若年発症の心筋梗塞にもつながります。ご自身の診断をつけることは血縁家族のかたの早期診断と早期治療にもつながります。
ご両親が60歳以下で心筋梗塞を発症したかたや、脂質異常症(特にLDL-C180以上)の指摘を受けているかたは家族性コレステロール血症か確認してもらうことをお勧めします。
当院でも家族性高コレステロール血症かどうか確認の検査を受けることは可能ですのでお気軽に御相談ください。
(西澤健吾)