「いびき」するあなた。睡眠時無呼吸症候群は命に関わります。

SAS(睡眠時無呼吸症候群)は肥満のかたの病気と思っていませんか?

SASの4割は肥満ではありません。

昼間は眠くもないし症状もないからSASではないと思っていませんか?

約半数は日中の眠気はありません。

いびきあるけど自覚症状ないため、そのままにしていませんか?

SASは高血圧、不整脈、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症 等のリスクになります。

※厳密な定義とは異なる箇所や回りくどい言い回しがありますが、わかりやすさを優先しますのでご了承ください。

SAS(睡眠時無呼吸症候群)とは 

SASとは「睡眠中の反復性に生じる呼吸気流の停止・減少とそれによる各種臨床症状や疾病」をさします。閉塞性と中枢性がありますが、大部分は閉塞性ですので今回は成人の閉塞性無呼吸症候群を中心に説明します。

閉塞性とは一般にいうところのノド付近の空気の通り道(気道)が狭くなる、もしくは閉じてしまっている状況です。SASの重要な原因として肥満がありますが、肥満だけではありません。東洋人は欧米人に比べて骨格的に気道が狭くなりやすいといわれています。肥満ではない(むしろやせている)かたでも、重症のSASの診断となるかたもいます。

SASの症状は

よく言われるところでは「寝起きも疲れがとれない」「昼間の眠気、だるい」等があります。重症のSASであった運転士の居眠りによる新幹線のオーバーランなどもありました。SASのかたは健常人とくらべて交通事故リスクが7倍高いという報告もあり注意が必要です。交通事故は自分だけでなく相手と自分の周りも不幸になってしまいます。中等症以上の無呼吸症候群の約半数は日中の眠気を伴わない、特に症状がないという報告もあります。よって、SAS発見のキーワードは「いびき」といわれています。

睡眠時無呼吸症候群はどのような病気につながるか

心筋梗塞、脳梗塞、不整脈(心房細動等)、高血圧、脂質異常 などの疾患リスクになります。特に心房細動を持っているかたは、SASを持っている可能性あります。一度検査をしてみてはいかがでしょうか。

どのくらいの人数がいるか

中等症以上(AHI15以上)だと成人男性の約20%、閉経後女性の約10-20%にのぼるといわれています。高齢・男性でSAS患者が多くなります。日本では900万人ほどのSASの患者さんがいるといわれていますが、有効とされているCPAP治療が処方されているのは100万人にも満たないといわれています。

SASの検査と診断

睡眠中の一時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI;Apnea Hypopnea Index)で診断します。SAS検査は終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で行います。これは脳波も含めて測定するため一般的には一泊検査入院が必要です。しかし、仕事等で忙しく入院できないかたもおおく、精度は劣りますが自宅でできる簡易検査(簡易モニター)もあります。

PSGと簡易検査の違いは脳波を見る点です。PSGは脳波を見ることにより睡眠に入ってからの無呼吸の状態を確認することができ、PSGはより正確な検査を受けることができます。

一般的には重症の場合(PSGではAHI20以上、簡易検査RDI40以上)でCPAP(陽圧酸素マスク)の保険適応となります。

睡眠時無呼吸症候群の治療

有効性からCPAP(陽圧酸素マスク)が第一選択とされております。マスクを口鼻(もしくは鼻のみ)にバンドで密着させます。スイッチを入れると呼吸に合わせて自動調整で風が入ってきます。この風圧で狭窄した気道を広げてくれる仕組みです。どうしてもCPAP装着で眠れない等あれば口腔内装置(マウスピース)、外科的手術があります。体位療法(横向き寝)でもSASを軽減できます。いずれの治療にしても肥満のかたは体重減量も必要になります。

まとめ

重症の睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP導入後に劇的に日常生活が改善するかたがいらっしゃいます。「CPAPはこんなに快適なのか。もうCPAPなしの生活は考えられない」とおっしゃるかたもいるほどです。一方でSASはいびきのみで症状ないかたもおられ、この方々はCPAP導入しても改善を実感できないかたもいらっしゃいます。しかし、SASの治療目的は眠気・だるさ等の自覚症状改善だけではありません。中長期(5年、10年)先につながりえる病気(高血圧、心不全、心筋梗塞、不整脈、認知症、糖尿病、脳卒中、うつ病 等)の発生リスクを下げることにもあります。

睡眠時無呼吸症候群は肥満のかただけの病気ではありません。キーワードは睡眠中の「いびき」です。部屋で一人寝ている方はいびきも気づかれないかもしれません。そのようなかたも朝から眠い、昼間にすぐにウトウトしてしまうなど、ご心配な点があれば一度、自宅で行う簡易検査だけでも受けてみませんか。

(西澤健吾)