これまでふらっとしたこと(めまい)、意識消失はありませんか? ひょっとしたら心臓が原因かも。

一瞬のめまいは多くの人が一度は感じたことがあると思います。ほとんどの場合は様子を見て構わないものですが、失神の前触れかもしれません。

突然の一時的(通常は1分以内)な意識消失を「失神」といいます。歩行中の失神は受け身をとれずに骨折なんてこともあります。さらには運転中にふらっと(または失神)し、気づいたら人をはねていたら…。自分だけがケガをするのであればまだ納得できますが、他人様にケガをさせたり、命を奪ってしまったら取り返しがつきません。

「めまい」一般の解説まですると膨大な量になりますので、今回は数秒の(ごく短時間、一過性の)めまい・失神について解説いたします。

めまい・失神の原因は?

失神は一過性の脳血流の低下によって引き起こされます。その前触れとして一過性のめまいが起きることがあります。失神の原因としては「起立性低血圧・反射性失神」と「心原性失神」の二つがメインになります。

  • 起立性低血圧・反射性失神が原因の70%ほどを占めます。「立ちあがった時、長時間の起立姿勢、ビックリしたとき、風呂上り、排尿・排便後」などがキーワードの確認が大切です。排尿排便後の失神は排便中でなく、排便後立ち上がって数歩での失神が多い印象です。また、冷汗や気分不良があってから意識消失となりやすいです。
  • 心原性失神は失神原因の10~20%と少ないですが、こちらは生命予後に関係するといわれます。不整脈と心臓の構造異常によるものがあります。不整脈の中には脈が速くなる「心室頻拍、上室性頻拍など」、脈が遅くなる・数秒心拍が止まる「房室ブロック、洞不全症候群」があります。心臓の構造異常には「大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、大動脈解離など」があります。胸部症状ある場合もありますが、前触れなく意識消失する場合もあります。

検査は?

診断がつかないことには有効な対処法・治療もできません。

失神した状況を詳細に確認することで起立性低血圧・反射性失神の可能性はかなり絞れます。若い人の起立時の失神では「Head Up Tilt検査」で長時間立位負荷を行い意識消失や急な血圧低下、心電図変化の有無で確認できます。心臓の構造異常は心臓超音波検査を行います。一過性の不整脈の診断はなかなかつかない場合もあります。まずは24時間Holter心電図検査を行います。これは24時間の心電図波形をすべて記録し、後日医師が波形を確認するものです(入院不要)。毎日不整脈があれば診断できますが、数日に一回、なかには数か月に一度の不整脈のかたもおられます。こうなると二回、三回の24時間Holter心電図でも不整脈が確認できない場合もあります。それでも不整脈性を強く疑う場合には、埋め込み型ループ式心電計(ILR)を検討します。長さ4~5㎝、幅7㎜のチップ状のものを前胸部の皮下に局所麻酔で埋め込みます。傷口は5㎜程度です。外来にて15分ほどで埋め込みでき入院も不要です。電池は3年近くもち、胸部に機械をあてると波形データを確認できます。診断確定できた場合や不要になれば取り除くことができます。

予防・治療は?

起立性低血圧・反射性失神は体質の影響が大きく根本治療は難しいのですが、命に関わることも少ないといわれています。日ごろから水分を多めにとっていただくことや、弾性ストッキング装着、Tilt訓練で緩和もできます。起立性低血圧・反射性失神は起きる状況やほぼきまっていること、気分不良や冷汗といった前触れがある場合がおおいことから、すぐにその場でしゃがんでいただくことで、失神を回避することもできます。

心臓の構造異常の場合は突然死の可能性もあり手術も検討されます。

頻脈性不整脈の場合はアブレーション治療や、ICD(埋め込み型自動除細動器)埋め込み検討します。

徐脈性不整脈であれば恒久的ペースメーカーの埋め込み術の検討となります。

上記のように治療方針が全くことなるので失神の原因検査が重要となります

まとめ

急なめまい、失神はいつ起きるかわかりません。安全に運転もできないのであれば日常生活もままならなくなります。歩行すら危険です。

めまい・失神は頭が原因と思われるかもしれませんが、心臓が原因ということあります。心原性失神は直接命にかかわることもあります。原因のわからない一過性のめまい・失神は循環器内科専門医にも相談してみてはいかがでしょうか。

(西澤健吾)