生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病など)について思うこと。

高血圧症・脂質異常症・糖尿病などは一般に日常生活の食事・運動習慣に大きく影響されるためまとめて生活習慣病ともいわれます。しかし、規則正しい食生活と運動習慣があるかたでも内分泌疾患等のため上記疾患を患う方々もいらっしゃることには留意が必要です。また、外食が多い、運動習慣作れない患者さまの生活背景も理解しなければなりません。

ここでは食生活の不摂生・運動不足による生活習慣病をもっているかたをメインに想定して読み進めていただきたいと思います。

生活習慣病の治療の目的は?

目的は元気で長生きしていただくこと、健康寿命を延ばすことが最終的な目標です。いろいろなデータ・エビデンスから生活習慣病の数値を改善させることで、脳卒中や心筋梗塞等を防ぎ健康寿命に延ばせるが示されています。

生活習慣病の症状は?

生活習慣病自体は数値悪化しても症状がほぼありません。血圧高くても、悪玉コレステロール高くても、血糖高くても それだけで症状はほぼありません。これが患者さまの治療意識の低さにつながります。数値悪化することで体調不良になったら多くの人が早期に医療機関を受診し治療開始してもらえるとおもいますが、症状ないゆえに医療機関受診されず、中には治療も自己中断されるかたもいらっしゃいます。ですが、間違いなく徐々に動脈硬化を進め、血管を脆くしていきます。症状出たときは血管が詰まる、破けた時です。その時点からいろいろな症状がでてきます。

血管詰まる・破ける症状は?

脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心筋梗塞、動脈瘤破裂、腎不全、下肢動脈閉塞などが代表的な症状となります。そのままお亡くなりになるかたもいらっしゃいます。脳卒中による麻痺で寝たきりを余儀なくされたり、心筋梗塞の場合は心機能低下が残り少し歩くだけで息切れがでるかたもいます。腎機能悪化して透析(一生涯、一回4時間、週に三日)導入となる方もいます。下肢動脈閉塞の場合は足趾が壊死するため最悪の場合切断が必要となります。こうなると日常生活も難しくなります。また、動脈硬化は一部にだけ出てくるわけではありません。血管は全てつながっており、他の血管も同じように動脈硬化は進行しています。一度できた動脈硬化は消失しません。同じかたが心筋梗塞になったあとに脳梗塞なったり、次は足の血管が詰まったり、腎機能悪化して透析となったり、また心筋梗塞となったりというかたもおられました。

ポックリいければそれでいいから治療しない…?

「生活習慣病は毎回異常値だが、体調いいしポックリいければいいから治療しない」という方がいらっしゃいます。しかし、生活習慣病を放置して元気なままポックリ逝けるかたが果たしてどれだけいるでしょうか。多くのかたは苦しくなったら医療機関を受診します。中には救急車を呼ばれるかたもいらっしゃるでしょう。運よく命が助かったとしても後遺症が残る場合が多くあります。息切れや手足に麻痺が残ったり、家族の介助が生涯必要となる場合もあります。金銭的にもかなりの負担となります。病気になってから後悔してほしくないと思います。日ごろの食生活の改善と月に一回の通院、内服を続けることは煩わしく感じるかもしれませんが、健康は他の何にも代えがたいものです。元気なままポックリ行くために日ごろから生活習慣病の治療をしていきませんか。

生活習慣病の治療は?

多くの場合、食生活の改善と運動習慣(walking)をつけていただくことでかなり改善が期待できます。これが一番「効果があり、副作用がなく、安あがり」の治療です。
それでもだめなら必要最小限で内服の助けをかりましょう。数値がかなり悪い場合には早期の内服開始する場合もあります。

一度内服すると止められないから飲みたくないといいますが…

「一度(内服を)始めるとやめられなくなるから、飲みたくない」といわれる方がいらっしゃいます。生活習慣病の薬は飲んでいる間は効果があります。やめれば効果がなくなり、内服していなかった状態に戻るだけです。体質を改善などで内服を飲まなくてよくなるものではありません。ですが、決して内服をやめられないわけではありません。年齢とともに内服が不要となったり、食生活・運動習慣をつけたあとに数値安定し内服の減量中止が可能になる場合もあります。数値がどうなるか患者さまと一緒に確認していくことが大切です。数値が安定していれば減量・中止し、逆に悪化するようなら内服増量・再開していきます。内服することが目的ではなく、健康寿命を延ばすために数値を改善することが目的なのです。数値が安定していたら内服薬が不要になる場合もあります。

※内服自己中断は危険ですので、内服の減量・中断は必ずかかりつけ医と相談して行ってください。

最後に

病気とは理不尽なもので、どんなに健康的な生活をしても脳卒中や心筋梗塞などで急にお亡くなりになるかたもおられます。しかし、生活習慣病を改善させることで健康寿命を延ばす確率は格段にあがります。

大事なのは日ごろの食生活と運動です。油控え目、野菜多めのさっぱりした食事を心がけ、運動はwalkingで充分です。ある程度続けられる範囲で頑張っていただき、それでもだめなら薬の力をかりましょう。平均寿命が85歳、90歳に迫ろうとしています。100歳近くてもお元気な方々もたくさんおられます。まだまだ、人生これからです。

…と、ここまで偉そうに書かせていただきましたが、かくいう私も皆様に自慢できるほどの食生活・運動習慣があるわけではありません。ジョギング始めたはいいものの何度脱落したかわかりません。

全てを一度に変更することは難しいと思います。時には自分にご褒美あってもいいと思います。美味しいものを今後も食べてもらうため、おいしいお酒を長く飲んでもらうため、人の世話にならずに最後まで自立するため、大切な家族との時間をこれからも過ごしていくため、いろんな理由がありますがそのためには元気で長生きしなければなりません。

脱落したっていいのです、また始めたらいいのですから。やらないよりはまし、まずはできること一歩踏み出してみましょう。(…といつも自分に言い聞かせています)

当院でも生活習慣病の相談・治療を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

(西澤健吾)